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ミツバチと共に90年――

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第8回 蜂蜜エッセイ応募作品

幸せ色のプレゼント

喜田久美子

 

 「蜂さんが、せっせと働いてくれました」
 そんな短い言葉を添えて、ずっしりとした瓶が年末に届いた。瓶の中には、琥珀色のはちみつがたっぷり入っている。
 贈ってくれたのは、職場の元同僚。彼女が現役だった三年前、
 「食べるならば、もらって」
 とプレゼントしてくれたのが始まりだった。
 朝は、はちみつトーストとブルーベリーソースをかけたヨーグルトを食べるのが、私の長年の習慣である。はちみつは朝の食卓の定番なのだ。
 「嬉しいわ。はちみつは私の毎朝のおともなの」
 とお礼を言うと、
 「私は何もしていないの。夫の仕事よ」
 との応え。彼女より一足先に定年を迎えたご主人が、退職後に念願だった野菜作りを始められ、そのうち養蜂にも精を出されるようになったという。夫婦二人だけの食生活では余りあるはちみつをちょうだいしたわけだ。
 「そんなに喜んでもらえるなら」
 と彼女は、職場を退いた後も届けてくれるようになった。
 その都度感謝を伝え、話を聴くうちに、ご主人は私が若い頃に社員だった会社にお勤めだったこともわかった。記憶を辿ると、新聞社のカメラマンとしてご活躍だった姿が、かすかに蘇ってきた。
 超多忙で厳しい職場におられたご主人が、仕事から解放されたのちを畑を耕し、育つ野菜をいつくしみ、そして蜂さんと語り合う日々を重ねておられる。なんと豊かな人生であることか。届くはちみつの琥珀色は、私のなかで幸せ色と呼び名を変えた。
 自由の身になって、長年やりたかったことに精魂込めているご主人にとっては、伴う労苦さえも幸せなのだと思われる。こつこつと作業を続けられたご主人に、そして届けてくれる彼女に、また何よりも蜂さんに感謝しつつ口にするはちみつ。その甘味は、私を幸せ心地に誘う。
 正月に集った子や孫たちがそれぞれの家に戻り、おせち料理もなくなった朝、私はひとりの食卓で、昨年の暮れに届いたはちみつの瓶を開けた。
 幸せ色が、新たな年の私を包み込んだ。

 

(完)

 

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